演習
「ナルトはイルカ先生かミズキ。
サクラは…そうだな、サスケか大蛇丸」
わざと間をおいて意識を引き付けようとするその魂胆。
バカバカしい。
「で、お前はオレかイタチ」
逆だろ。
明らかに。
「二者択一だ」
ヘルメットのような形状の装置を被せられたナルトが、
ぶつぶつ文句をたれている。
負けて終わっても、あるいは手加減される屈辱を味わっても
構わないのなら好きな方を。
嫌いな方を選ぶなら絶対に勝たなければ終われない、
終わらせたくないと思わざるを得ない。
そういう状況に身を置くことで効率良く精神と肉体を鍛える
という寸法らしい。
「ナルトはともかく、私とサスケくんは不利よ。
まともに戦ったことのない相手だし…それに」
ちらちらと視線を寄越しながらサクラが切り出す。
「ん〜…。
だったら、好きな方を選べばいいんじゃない?」
耳鳴りがする。
こんな不快な感覚は久しぶりだ。
「じゃ、入れるからな」
頭の外側から声がかかる。
僅かに首を下げて開始を促すと、一拍おいてまた声が聞こえた。
「ホントにいいの、お前?オレじゃなくて」
光の波が視界を横切ったかと思うと、一瞬にして眼前の景色が変わる。
「ある意味ホンモノだから、夢中にならないように気をつけろよ」
そわそわと落ち着かない様子のサクラがされていた忠告を思い出す。
「オレも昔やったけど、好きな方を選んだ方がやりやすいのよ。
気分的に」
お前、バカだね―――
オレにしか聞こえない声量でそう言ったアイツは知らない。
否、誰も知るはずはない。
二人だけの秘密が…イタチとオレとの間にいくつか存在していたことを。
外界から完全に遮断された空間。
似ている、あれに。
両の手を強く握り締めて息を飲む。
膝が微かに震える。
次の瞬間、体温が一気に上昇した。
糸が折り重なって模様を作り出すように、
細い光がいくつも集まって人の形になる。
髪の毛の一本一本まで忠実に。
すべて現れ終えたイタチがようやくこちらに目を向ける。
幻だと思えば―――
何も感じない
何も
触れたいと、また会いたいと願ったイタチが今、目の前にいる
―――本当のイタチではないけれど
そっと手を伸ばして触れた腕に目線を落とすしぐさ。
見上げた美しい顔は、あの頃のままだった。
何か言って。
名前を呼んで。
「サスケ」
身体に触れて。
その腕で抱きしめて。
頬を伝う雫が乾くまで、上がりきった熱が冷めるまで。
続
INFO:2005/12/23(01:26) 第七班だけどイタサス
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