雨が降っていた。
あの日と同じ雨だった。
じっとりと重くて生ぬるい、嫌な感触しか残さない。



九尾を腹に宿したナルトをおびき寄せるために、奴らはオレを使うことにしたらしい。
さしずめ、イタチの提案か何かだろう。あいつはオレを人とは思ってくれていない。

そんなこんなで昨夜遅く大蛇丸の館から乱暴に連れ出されて、今は洞窟の中にいる。
隠れて待ち伏せでもしているつもりなのだろうか。

外の様子を伺おうと身体を少し動かす。ほんの少し。
その瞬間、クナイが飛んできて膝をかすめた。

「お前は未だ動かなくて良い」

聞こえるか聞こえないか、ギリギリの声量でイタチが言う。

―――知るか。
手筈通りに動く必要など全くない。
命令をきかなくたって殺されはしない。
オレは、“万華鏡写輪眼を開眼しうる者”の中に含まれている。

後方に落ちたクナイを拾いあげて、イタチに向けて放る。
隣で外を見張っていた図体のやけにでかい男が気付いて払い除ける。
イタチはその間、微動だにしない。
まるで彼の行動を予期していたかのように見えて、サスケは不愉快な気分になった。


チィ、と舌を鳴らす。
イタチがゆっくりと首を廻らせてサスケを見た。

「うずまきナルト」

そう呟いて立ち上がり、一歩ずつ距離を縮めていく。

「懐かしい名だろう?」

足枷を強く踏み付けながら、イタチが耳元でそっと囁いた。

「殺せ。……お前の手で」

サスケの髪をギュッと掴んで、うつむいた顔を上向かせた。
四つの写輪眼が静かに睨み合う。


「九尾が入ってる以上、オレに勝ち目はない……」
もうあまり鮮明ではない終末の谷での戦いを思い起こしながら、サスケは苦々しく呟いた。

イタチの手は既にサスケの髪を解放し、懐へと戻っていた。
何かを考えているようなそぶりを見せ、岩の壁に寄りかかる。
背中にひんやりとした冷たさを感じながらイタチ















INFO:2005/07/30(06:38)イタサス 書きかけです。
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