無題 ---side:サスケ










理由なんて無い。
ただ快楽が欲しい。

オレは欠け落ちた破片をひとつずつ拾い集めている。
イタチに裏切られ、ばらばらに砕け散った欠片。

その日もいつもと同じように、同じ奴と。
事務的な行為を済ませ、気だるい身体を引きずって家に帰る。



怒りや悔しさを忘れた訳じゃない。
今でもオレはイタチを恨んでいるし、憎んでもいる。
でも、復讐を遂げるための力を得るにはどうしたらいいのかが解らない。
修行をみてくれそうな奴は毎日任務だ何だと忙しく、オレに割く時間なんてせいぜい週に数回、一時間程度ってとこだろう。
……実は今がそうだ。

今は、術の修行よりも―――





「遅かったな」

引き戸に手をかけた瞬間、聞き慣れた声が頭上に降ってくる。
驚いて振り向くと、二つの真っ赤な写輪眼が瞳を捕えて
光のない精神世界へとオレを引きずり込んでいく。



本当は忘れたいのかもしれない。
新しい世界に身を沈めて、泡になって消えてしまえたら。

あるいは拐って逃げて欲しい。誰でもいい。何処か遠くへ。

気が狂いそうだ。
こんな呪縛―――










アイツは、刀で何度も刺されたと言った。
72時間執拗に。
無表情のイタチの分身に取り囲まれて。

だが、オレにかける幻術はもっと酷い。

イタチとオレ。
まだ二人が仲の良い兄弟だった頃。
幼いオレを飲み込む色の世界、どうしようもない習慣に支配された日常がジオラマのように展開していく様を見せられる。
今となっては信じがたい。
あれもこれも虚構だったんじゃないかとすら思う。
幼い自分はただひたすら直視することを躊躇うような痴態を演じるのみで抵抗はおろか、イタチから与えられる愛撫や刺激を疑うことさえしない。



気付けよ

嘘なんだ 全部

その言葉も視線も

信じるな





「……!」

赤と黒の世界から急に引き戻されたかと思うと、またすぐ意識を奪われる。
首筋に沿えられた指が、アイツにつけられた跡をなぞる。
イタチが直接肌に触れてくるのは珍しい。
懐かしい感触がふつふつと沸き上がる。
そしてゆっくりと、体温が交ざり合う。


「…に、すんだよ」

とっさに出した声は無様にかすれていた。

イタチは知っている。
どうすればオレを苦しめられるのか。
痛めつけられるのか。
いちばん堪える方法でオレを崩していく。



それは、熟れた果実を握り潰す感覚に似ていた。















INFO:イタサス(別CP要素含)
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