-泡-










水面にそっと掌を押し付けると ちゃぷん、と音がした。
清浄な湯気に囲まれながらイタチは思い出していた―――


「いたいぃ」
「我慢しろ」
「はいってくるのー」
「…目閉じてろ……ちゃんと」
「うぇっ!にがっ」
「ほら、もう喋るな。口も閉じてなさい」
「くちゆすぐー」

なんのことはない、ただ兄が弟を風呂に入れてやっているだけの光景。
の、はずが。

弟より五歳年上ともなれば体格もずいぶん違う。
イタチの身体からは手足がしなやかな曲線を描き、そこかしこの無駄な脂肪が削ぎ落とされつつあった。
一方、弟のサスケはまだ赤ん坊だった頃の名残が目につく有り様だったので、イタチは「これがずっとこのまま
だったらどうしよう」などと不安に駆られたりしていた。

「にいさん、みて!」
髪を洗われている間にサスケが起こした行動…。
「石鹸が無駄になるだろう」
「ようふくきてるみたいでしょ」

おもむろに椅子から立ち上がったサスケは、その場でクルリと回ってみせた。
泡立てられた石鹸が幼い身体に張り付いて、胸部から下腹部にかけての範囲を覆い隠している。

「うしろもして、にいさん」
「オレがか」
「あわあわ〜」
「お前、髪もまだ洗い流してな……」

ほんの一瞬だった。
ぬるつく床に足を滑らせたサスケがバランスを崩す。
受け止めるのは容易かった。
しかし―――

「わ〜ヌルヌルっ」
「サ……」















INFO:2005/06/17 11:21
イタサス(仔)
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