癖
「まだ治ってないんだな、その癖」
横から手を出して蛇口をひねりながらサスケが言うと、イタチは途端に不機嫌になった。
普段全くと言っていいほど感情を表に出さないイタチも、
サスケと二人で居るときには少しだけ素直になる。
あの戦いの後―――
視力が著しく低下し始めてから少しだけましにはなったが、
イタチには異常なほど長い時間をかけて日に何度も手を洗う癖があった。
爪の間は毛の柔らかいブラシを使い、指の付け根から先、
関節の皺までは掌と指でまんべん無く丁寧に擦っていく。
石鹸の泡が流れ落ち、ぬめりが消えても洗い続ける。
この習慣はイタチが暗部に入隊して間もなく身についたものだ。
ごく当たり前の「手を洗う」という行動がこうした極端な変化を
呈してしまったのは、。
里は、その忍が幼いからといってケウな才能を容赦したりはしない。
擦りきれるまで、尽きるまで、有るだけの力を出しきるように強制する。
特にこの木ノ葉隠れの里では、個を持つ事を許さないきらいがあった。
齡八年にして、イタチは写輪眼を開眼させた。
それはうちはの才に愛された事を意味すると同時に、うちはの血に縛られて生きる運命の
始まりをも示唆する出来事でもあった。
うちは一族の血継限界―――
最強とうたわれ、また畏れられた写輪眼という特殊な能力。
後の世代にそれを受け継がせるための因習の儀が執り行われようとしていた。
「イタチ、此処へ」
女たちの詰めている部屋に通されて、イタチは困惑していた。
白粉の匂いと姦しい歓声、好奇の視線が一斉にイタチを刺す。
「なんて可愛らしいんでしょう…」
一人の女がイタチの身体に触れながら下卑た声で言った。
酒血肉林という言葉があるが、今まさにイタチの周りに広がっているのがそれである。
集会場の畳の上で寛ぐ女たちの着物の裾ははだけて半裸、あるいは一糸纏わぬ姿になっている者もいた。
目の遣り場に困ったイタチがうつむくと、顎を掬い上げようとする手が四方から伸びてくる。
「決まりだから」
「みんなしてきた事よ」
そう言いながら触れてくる手指はどれも狂喜に細かく震えていた。
家畜のような肉の固まりに子を孕ませる行為を唐突に強要されて、イタチはひどく辟易した。
終
INFO:2005/09/18(02:33)イタチ過去捏造 書きかけです。
prev | next | menu