無題 ---2










「イタチ…!」

「放っておけ」


立ち去るイタチをよそに、フガクは腕組みもほどかず吐き捨てた。
宛てもなく伸ばされたミコトの手がゆっくりと下がっていく。

「あの子がシスイくんに惹かれるのも無理はないわ。
似てるもの…二人は。血筋的に近いのもあるけど、」

目を瞑ったままのフガクに向けていた視線を襖に移しながら
ミコトがいたく悲しげに呟いた。

「あの子は…優しさに飢えているのかもしれない」



生後間もなくその才を見抜かれ儀式を施されたイタチは他の誰より厳しく育てられた。
人の心を殺し忍として生きることを強いられたのだ。
一族の未来をも背負わされ、少年の双肩はその重さに悲痛な叫びを上げていた。



「この里を愛する気には…とてもじゃないが成れない」

シスイが隣に腰かけると、長椅子が軋んだ。

「イタチ」

名を呼ばれ、組んだ手と手の間に沈めていた顔を上げた。
泣きそうな顔をしているに違いない、と思ったがシスイになら見られても構わない。
そのまま目と目を合わせた。

暗部に入ってもきっと状況は変わらない。
任務がどこを通って誰の手を渡ってくるのかが少しはっきりするだけだ。
一族の繁栄への期待は相変わらずイタチにかけられているし、
里のために生き里のために死ねという乱暴な理念はどこまでも付いてくる。



「割り切るか、それとも打ち壊すか―――」

写輪眼を持たない者は、たとえうちはの血族であっても冷遇を余儀なくされる。

全く、笑えない冗談だ。

滅私奉公ということばを体現したところでどうなる。
イタチはシスイがしてくれたある少年の話を聞いて以前より一層幻滅を深めた。



一族から追放され、名すら持つことを許されず今も日陰で生きる
あるひとりの少年の話を。















INFO:イタチの過去(暗部設定)を
今度こそ本気で捏造しようじゃないか!
…と意気込んだはいいが、って感じ。
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